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公演ギャラリー


超訳鏡花「義血狭血」

  • 日程:2012年1月13日
  • 会場:浅草リトルシアター  photo/金井恵蓮
  • 泉鏡花はヘンな作家です。シェイクスピア作品が
  • 一人じゃムリだ、複数で書いたんじゃない?
  • といわれるのと同様に、ぜんぜん違う作品を300以上残した。
  • 悲劇、落語風、戦争、歴史劇時代劇、SF、サスペンス、ハードボイルド、難解な言葉で書いたエロ小説。芸者、芸人もよく登場しますが、
  • よくお化けがでるのは能のパロディかなと思われます。

「義血狭血」は明治27年、読売新聞連載。
明治28年川上音二郎一座が脚色し、「滝の白糸」という
新派の代表的芝居となる。
タイトルは作者の造語。
義に生きる男と狭に生きる女、かな?
お話は明治時代の「ロミ&ジュリ」です。


「滝の白糸」は水芸の大スターです。
稼げるからお金はいっぱいあるけれど、
旅から旅へ巡業を続け河原暮らしの芸人です。
街道レースがすごく上手な
乗合馬車の御者と出会います。
馬車を運転する王子ですね。
没落士族のお金に困っている苦学生です。
(士族とは元サムライ)
彼が法律を勉強したいというので
私がスポンサーになってやるよ、
あんたに貢いでみたいのさ、
と彼女は約束します。
「自分は高岡の村越欣彌です」
「私は水島友です」
「お宅は?」
「お宅はちと困ったね。見世物小屋さ」
滝の白糸は越後の国、新潟生まれの新潟美人。
その水芸はいたるところ大入り満員。
全国各地の興行主は莫大な給金を払うに至れり。
村越欣彌は母を残して東京に遊学、
白糸は彼らに金を送って養う
所帯持ちの身となれり。
それでもお金は底をつき、白糸は借金を重ね
前借しては金を送る。
無頓着な白糸は学業成就の期日を知らず。
欣彌も学業に没頭していて、これを伝えそこなった。

彼の半年分の学費を盗賊にとられた白糸は
盗賊が落とした出刃を拾い
盗みという手段に気づく。
お金をとってそして死のう、
料亭に押し入り
当たるを幸い滅多切り、
出刃を投げ捨て一目散に走る。

約束交わした夜から
はじめて再会するのは金沢裁判所。
事件を担当したのは
新任検事代理、村越欣彌、三年前の御者である。
彼のためのお金をとられた
とは言えないので
白糸は黙秘を続けるが

ついに白糸は自白せり。

検事代理は
大恩を重ねたる至大の恩人をば
殺人犯として起訴したり。

泉鏡花の第一稿のタイトルは「盲判事」
ビクトル・ユーゴー「盲使者」
を下敷きにしたのだろう、とのことです。
泉鏡花の先生、尾崎紅葉が
「これは一般ウケしないからダメだよ」
と、ボツになったラストが、
マニアックすぎてて、私は好きです。
証拠物件の出刃包丁取り上げ
オィディプスの如く両眼突き刺し
「本官の眼中には親族もない。魂もない。
あるのは義務だよ」


上演の時の、おまけの実験超訳オチ
彼は証拠物件の出刃包丁もって
水島友をひっかかえ金沢裁判所を脱出
そこに人力車夫仲間、例の乗合馬車でかけつけ
愛馬にまたがり夕陽に向かって馳せ去りぬ。by楠


泉鏡花(明治27年)


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