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公演ギャラリー


超訳鏡花「黒百合」

  • 日程:2012年7月13日
  • 会場:浅草リトルシアター  photo/金井恵蓮
  •  三島由紀夫やいろんな人が
  • 「鏡花は天才」といってたそうです。
  • ああそうだなと思いました。
  • 明治時代の、まだハリウッド映画も誰も知らないときの
  • ジャパニーズドリームな冒険物語。
  •  

 いまは山に安全な道がありますから、
登山家だったら見ることができますが
「黒百合」は
かつては人が入ってはいけない山に咲き
危険を冒さないと手に入らない
幻の花でした。
 宝石のような花を夢見る人々のお話です。

ちはやぶるかみよもきかずたつたがわ
からくれないにみずくくるとは


主人公の名前は
反体制的貴公子だった
業平の
この句をパロディにしていると思われます。
主人公は千破矢瀧太郎といいます。
千本の矢を破り、鯉が滝を登るように
神業による水力もやっつける
ヒーローです。


お嬢さまは黒百合という花を手に入れたい
植物学者です。
手に入ったらお金をあげる、と花売り娘に約束します。
花売り娘は好きな男の目を治すお金が欲しいから、
危険な山に行って黒百合を手に入れようと思います。
この花売り娘を手に入れようとする
野蛮な人たちもいます。
瀧太郎は子爵家の当主でありながら
盗みをくりかえしおもしろがっていましたが
盗むなら黒百合のようなものを盗んだらどうかね
と、「白魚のお兼」という姉さんに言われます。
記号は総曲輪(そうがわ)
という実在の地名です。
すべての輪が曲がるところ、
という
シャレにしていると思われます。
総曲輪の榎、という
佐々木成政が妾をつるして殺した
木の下に縁日がでていて
姉さんが商売をやっています。
姉さんの商売は銀流し
「メッキはメッキ、ガラハギはガラハギ、
  どこへ出してもイカモノですが、
 この銀流しをちょいとつければ真鍮変じて銀となる」

いかがわしそうな商売をやりながら
この姉さんによってすべてが曲がる輪の記号が
ところどころにあらわれます。
人をあざむき凶器となる指輪、
キセルが刻む暗号の丸い印

この姉さんの野望は世直しか革命か
とも思われます。
「瀧さん、まあ
 世の中にや
 もっと面白い盗賊のしようが
 ありそうなもんじゃないか
 もっと立派な
 日本晴れの盗賊がありゃ
 しないかしら」


越中の国立山なる、岩瀧の奥深く
黒百合なんというものありと
語るもおどろおどろしや、
富山の町の花売りは
あはれに美しき女なり
その名の雪の白きに愛でて

百合の名の黒きをも
濃い紫と見たまへかし。


明治32年6月~8月読売新聞連載。

(明治35年泉鏡花)


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